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正論がはびこる。人間の数だけはびこる。路地裏を歩くその靴の裏に
びっしりと張り付く。今降る雨にも吸い付く。肩が重い。重い。重い。正
論ははびこる。だが決して真実ではない。靴も服も洗えば綺麗になる。
不完全。そう不完全なんだ。雨は決していつまでも対象を濡れたまま
に出来ない。太陽がそれを妨げる。不完全。不完全。自然も結局、自
分と同じなんだ。ただ大きさが違うだけで。同じ不完全なんだ。けれど
雨は太陽を憎まない。太陽は雨の邪魔をしない。見上げても曇り空だ。
だが人間は。いや今自分が知る範囲の人間は違う。不完全なものが
集まっても完全になる保障はどこにだってない。どこにだってないんだ。
けれどそのボックスの中を歩く人たちは、完全を血眼になって探してる。
受け止めれば楽なのに。自分は今傘を持っていない。濡れることで雨と
踏むことで靴を対話してるんだ。いつまでたっても不完全な自分。完全
とはなんだろう。雨に濡れないことか?靴に傷をつけないことか?
雨に濡れ、路地裏を歩く自分を笑う。冷たい建物のほうが心地がいい。
歩くスピードはそのままに。顔の一滴の雫に微笑む。指で掬ってやる。
不完全と言いながら、他人の誤りに気が付くと。突然「完全」になりその
口はゆるく月になる。喫茶店に入る。それなりにぱたぱたと雫と別れ。
注文してから、頬杖をついて外を眺める。さまざまな人。さまざまな傘。
いいじゃないか。それで。さまざまでいいじゃないか。同じ色の傘が歩く
道なんてつまらない。今流れている音楽、結構自分好みかもしれない。
虚勢を張るぐらいなら、受け止めてあげればいい。傘の雫を、靴の感
触をなるべく覚えていればいい。自分の強さも弱さも分からなければ、
前にも進めなければ、後ろにだって逃げられない。
「お待たせしました」
カップを口に運ぶ。甘い。ブラック頼んだはずなんだけど。
そう、これでいいじゃないか。ブラックを頼んだのに出てきたのはほんの
り甘い珈琲。なんだか面白いじゃないか。なんだが笑いたくなって、少し
上を見上げて文庫本を取り出すと、いつものように文字に目をすべらせた。
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