忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2024/11/24

こばなし 3 。

正論がはびこる。人間の数だけはびこる。路地裏を歩くその靴の裏に
びっしりと張り付く。今降る雨にも吸い付く。肩が重い。重い。重い。正
論ははびこる。だが決して真実ではない。靴も服も洗えば綺麗になる。
不完全。そう不完全なんだ。雨は決していつまでも対象を濡れたまま
に出来ない。太陽がそれを妨げる。不完全。不完全。自然も結局、自
分と同じなんだ。ただ大きさが違うだけで。同じ不完全なんだ。けれど
雨は太陽を憎まない。太陽は雨の邪魔をしない。見上げても曇り空だ。
だが人間は。いや今自分が知る範囲の人間は違う。不完全なものが
集まっても完全になる保障はどこにだってない。どこにだってないんだ。
けれどそのボックスの中を歩く人たちは、完全を血眼になって探してる。
受け止めれば楽なのに。自分は今傘を持っていない。濡れることで雨と
踏むことで靴を対話してるんだ。いつまでたっても不完全な自分。完全
とはなんだろう。雨に濡れないことか?靴に傷をつけないことか?

雨に濡れ、路地裏を歩く自分を笑う。冷たい建物のほうが心地がいい。
歩くスピードはそのままに。顔の一滴の雫に微笑む。指で掬ってやる。
不完全と言いながら、他人の誤りに気が付くと。突然「完全」になりその
口はゆるく月になる。喫茶店に入る。それなりにぱたぱたと雫と別れ。
注文してから、頬杖をついて外を眺める。さまざまな人。さまざまな傘。
いいじゃないか。それで。さまざまでいいじゃないか。同じ色の傘が歩く
道なんてつまらない。今流れている音楽、結構自分好みかもしれない。

虚勢を張るぐらいなら、受け止めてあげればいい。傘の雫を、靴の感
触をなるべく覚えていればいい。自分の強さも弱さも分からなければ、
前にも進めなければ、後ろにだって逃げられない。

「お待たせしました」
カップを口に運ぶ。甘い。ブラック頼んだはずなんだけど。

そう、これでいいじゃないか。ブラックを頼んだのに出てきたのはほんの
り甘い珈琲。なんだか面白いじゃないか。なんだが笑いたくなって、少し
上を見上げて文庫本を取り出すと、いつものように文字に目をすべらせた。

拍手[1回]

PR

2011/10/04 こばなし Trackback() Comment(0)

COMMENT

COMMENT FORM

NAME
MAIL
WEB
TITLE
COMMENT
PASSWORD

TRACKBACK

TRACKBACK URL :
カウンター
 


Since 2012.2.5. 
 
カテゴリー
 
 
 
リンク
 
 
 
参加中
 
美術ブログランキング

人気ブログランキングへ

クリエイター×コレクション

オリジナル創作FAN!

文芸Webサーチ

テキストサーチ xx(ペケペケ)

アートサイトサーチ 
 
最新記事
 
(10/25)
(10/08)
(09/18)
(09/17)
(09/14)
 
 
最新コメント
 
[03/18 tamy]
[09/03 n.n.]
 
 
ブログ内検索
 
 
 
Mail
 
■感想、質問等何か

ございましたらご連絡ください。

Powered by NINJA TOOLS
 
 
Twitter
 
 
 
BOOK